どんでん返しを作るための二つのコツとは?

ミステリーや冒険活劇に限らず、どんでん返しは読者に驚きと楽しさを与える。最後に綺麗に配置されれば、より物語を刺激的に、印象的に仕立て上げるだろう。

このエントリでは、どんでん返しについて書いてみたい。

どんでん返しにまつわるクエスチョン

高校の頃の論文の授業で、ちょっとしたクイズがあった。うろ覚えだけれど書いてみよう。

理由まで含めて正解すれば「どんでん返しマスター」だ。ぜひ解いてみてもらいたい。

以下の文章を読み、設問に答えなさい。

厚い雲に覆われた夜だった。

わたしはいつも通り甲板に出て、目の前に広がっている海を眺めた。深呼吸をすると、生ぬるい潮の香りが鼻の奥を刺激する。月明かりも星の明かりもないせいか、その水面は漆黒の沼の表面のように見える。

ふと見渡すと、手すりにもたれかかって水面を見つめる一人の女性が目に入った。

20歳くらいだろうか。およそ生気を感じられない、真っ白な顔をした髪の長い女性だ。今にも海に身を投げてしまいそうな、そんな雰囲気を感じた。

「どうかされましたか。乗務員さんでもお呼びしましょうか」

気になって声をかけたわたしに、彼女はゆっくりと視線を向け、うっすらと笑う。

「フフフ、お気になさらず……少し、気味の悪い話を思い出しただけです。この辺りで起きた話なんですけど」

「ほう、どんなです?」

「昔……信じていた男に騙されて、一生かかっても到底払いきれない借金を背負わされた一人の女性が、船の甲板から海に身を投げたんです」

甲板から女性が身投げ・・・・・・・・・・

わたしは黙って彼女の話を聞いた。

彼女は自分の髪に指を通し、言葉を続ける。

「その女性は、髪の長い、若い女性だったらしいです。20歳だったらしいので、ちょうど私と同じですね……」

わたしはなおも黙って、彼女の言葉に耳を傾けた。

彼女は、ぼんやりと海の彼方を見つめた。そして再び口を開く。

「……その女性の身投げ以来、この辺りでは時々、海に飛び込む彼女の霊が現れるそうですよ……今日みたいな薄気味悪い夜に、ふらっと現れるのかもしれませんね。海に飛び込むにはうってつけの夜ですから……そう思いませんか?」

彼女はまたもフフフと薄気味悪く笑った。

そして……

設問:この後、どうなったでしょうか。以下から一つ選びなさい。
  1. 髪の長い女性が身投げをした。
  2. わたしが身投げをした。
  3. 会話している二人以外の全員が身投げをした。
  4. 船が転覆した。

果たして正解は?

正解はどれだろう。わかるだろうか。

ヒントはもちろん文中にある。

そしてもう一つのヒントは、このエントリのテーマが「どんでん返し」だということ。

ではいいだろうか。少しスクロールをしたら答えが出るので、考えてみてほしい。

正解は2「わたしが身投げをした」だ。

なぜそれが正解なのか

最大のヒントは2行目、「わたしはいつも通り甲板に出て」だ。

甲板に出るのが日常茶飯事である人間は、乗務員か、この話で言えば幽霊か、それくらいだ。「この辺りでは時々、海に飛び込む彼女の霊が現れる」という女性の言葉が示す通り、この幽霊は、時々甲板から海に飛び込むのである。「わたし」が幽霊であれば、いつも通り甲板に出ることと、つじつまが合う。

そして、乗務員を呼んでこようとするところから、このわたしが乗務員であるという選択肢が排除される。

全体のトーンとしては「1髪の長い女性が身投げをした。」の雰囲気を醸し出しつつも、散りばめられたヒントが、2が正解であることを示している。

物語の続きは

先の物語がどう続くのかを記してみよう。

「そう」

彼女の薄気味悪いその笑顔に、わたしは応える。

「ちょうどこんな日でした。あの日、わたしが・・・・甲板から海に身を投げたのは」

多額の借金を押し付けられ、どうしようもなくなったわたしは、救いを与えてくれるようなこの薄暗い水面に、吸い込まれるようにゆっくりと飛び込み、そして海の奥へと沈んでいったのだ。

厚い雲に覆われたこんな夜はいつも、海に身を投げたくなる。

わたしは甲板の縁に立ち、長い髪を海風になびかせながら、いつも通りに・・・・・・海へと身を投げた。唖然とした顔でわたしを見つめる顔色の悪い女性を横目に、その深い闇のような水面に救いを求めるようにして。

どんでん返しを作る二つのコツ

物語にどんでん返しを盛り込む場合、以下の二つを意識する必要がある。

  • 「読者」と「登場人物」の両方をだます
  • 納得できる伏線を事前に用意しておく

それぞれ説明をしていこう。

「読者」と「登場人物」の両方をだます

どんでん返しというものは、作中のごくごく一部の人物だけが真実を知っている、そういう構図からもたらされるものなのだ。大多数の登場人物と、読者は答えを知っていてはいけない。

先の例でいうと、真実を知っているのは作者を抜きにすれば「わたし」だけだ。そして、その他の登場人物である「青白い顔の若い女性」は、真実を知らない。もちろん読者も真実を知らない。

他の登場人物たちさえ、そのどんでん返しに潜む真実を知らない。だからこそ、小説の中で本気のリアクションをする。主人公が死んだと思って泣き叫んだり、絶望のあまり自殺してしまったり。そして読者はその描写に驚いたり、恐怖を感じたり。

どんでん返しの要素として、真実を知らない登場人物たちに、そして読者に、「素のリアクション」をさせることが必要なのだ。

そして、登場人物と読者に「素のリアクション」をしてもらうために、順路(今回の例で言えば「青白い顔の若い女性」が幽霊であるかのように誤解させること)を用意しておくことが不可欠となる。

納得できる伏線を事前に用意しておく

どんでん返しを起こした後、それが起こるべくして起きたのだということを納得させるための仕込みを、事前にしておく必要がある。

先の例でいうと、冒頭の「いつも通り」の一言だ。いつも通り甲板に出る人間など、乗組員を除いては幽霊しかいないということを利用し、それをはじめにさりげなく入れておく。これが後の伏線となる。

要するに「ああ、この人が幽霊だったのね」と合点がいってもらうための前準備が求められる、という話だ。

おわりに

どんでん返しを仕込みたければ、読者と登場人物両方ともだますように話を書き進める必要があることと、真実を明らかにした時、なるほどと思わせるような伏線を張っておく必要があること。この二つは覚えておいてもらいたい。

もう少し言うと、今回は触れていないけれど、その伏線は伏線とは気づかれないよう、しかし印象的に読者に記憶されるように書いておく必要がある。これについては機会があれば別エントリで触れたいと思う。

というわけで、どんでん返しを作る代表的な方法について、簡単ではあるが触れてみた。ここに記してあるテクニックを応用し、どんでん返しを鮮やかに決めてもらいたい。

活用されたし。

ライトノベル作家。
商業作家としての名義は「くれあきら」とは別。今は主にブログで小説にまつわるアレコレを配信中。デビューから商業作家時代の話を「今、小説家になるために必要なもの(1)」に書いてます。