設定を考える時、小説家として意識すべきポイント

小説における設定とはなんだろうか。

僕が思うに、それは「小説家として、最初から最後まで徹底してつき続けないといけない嘘」だ。

魔法が使える世界観の物語を描いたのであれば、それが実は演技とCGでした、としてはならない。

妖怪が出てくる物語なら、妖怪は最後まで妖怪でい続けてもらう必要がある。実は彼ら妖怪は被り物をした人間でした、では台無しだ。

今回は、小説家として、設定を作るときに注意すべきポイントは何か、そんな話ができればと思う。

ちなみに、このエントリを読む前に「小説家が駆使する「四種の嘘」とは?」を先に読んでおいてもらえると、よりこのエントリを俯瞰的に捉えることができると思う。ぜひ一読してから以降を読んでもらいたい。

では、いってみよう。

設定とは、最後まで突き通さないといけない嘘

僕は小説における設定を、「小説家が駆使する「四種の嘘」とは?」の中で「読者をだまさない&登場人物をだまさない嘘」と位置付けた。

つまり、少なくとも物語の世界の中では真実として扱われる、そういう類の嘘ということになる。

魔法が使えたり、未来や過去に行けたり、宇宙人が出てきたり、妖怪と戯れたり。そういう、現実では起こらない出来事を、物語の中における真実として書く。

登場人物からすると、魔法が使えるのは嘘でもなんでもなく、まぎれもない真実であり、読者としてもそれはその世界におけるまぎれもない真実として読む。

「ハリーポッター」を読んでいる読者は、「登場人物の誰かが「魔法なんて嘘さ」と読者に向かって言い放つ時が来るかもしれない。それがないとは限らない」なんてことを考えない。

基本的に、あの世界では魔法は存在するものとして描かれている。それが、読者と作者の暗黙の約束事だ。

読者は作者の作ったその設定というなの嘘をそのまま受け入れてくれている。それを裏切ることは許されていない。

これが、設定にまつわる最大の注意点だろう。

設定を構成する三つの要素は

設定を考えるにあたって注意をしないといけないポイントは他にもある。

設定の大枠を構成する要素は、だいたい以下の三つだ。

舞台:中世ヨーロッパ、近未来、現代など

武器:魔法、超能力、悪知恵など

敵:ドラゴン、悪の組織、クラスのヒロインなど

例:

「中世ヨーロッパ」で、「魔法の力」を使って、「ドラゴン」を倒す。

「近未来の世界」で、「超能力」を使って、「悪の組織」と戦う。

「現代の世界」で、「悪知恵」を使って、「クラスのヒロイン」を攻略する。

この時、舞台、武器、敵のそれぞれのカテゴリの中で、チョイスするのはそれぞれ一つにしておいた方が良い。

というのも、設定というのは先に述べた通り、ある種の嘘だ。

となると、嘘をたくさんついたり、途中から別の嘘をついたりすると、ある種のズルさを感じさせてしまうことになるのである。

子供の時のごっこ遊びで、「俺、戦士」と名乗りをあげて、勝手に最強の魔法を唱え出したら「お前、戦士だって言ったじゃん」となる、そういう話と思ってもらえれば良いだろう。ズルは受け入れられない。

未来と過去に行けるという世界観を作品の主軸にしたとしたら、そこに剣と魔法でドラゴンを倒す世界観をねじ込んでしまわない方が良い。

もしそうしたいなら、どこにでもいける扉が存在するという世界を作り、その扉の向こう側が未来だったり過去だったり剣と魔法の世界だったり、という風に、一つ嘘の中に全てを詰め込めるようにしておかないといけない。

そうしないと、読者は何を信じて良いかわからなくなるのだ。

例外の存在

ここで一つ、例外的な話をしよう。異世界転生だ。

異世界転生は、異世界に転生するという能力と、なんらかのチート能力の二つがセットになって主人公に提供される。

これは従来の小説観を持った人間たちには、ある種の引っかかりを覚えるものである。言うなれば、二つの嘘を同時についていることになる。

従来の小説、たとえば小野不由美の「十二国記」では異世界に行くだけで、主人公はそのまま生身の人間のままだった。西尾維新の「物語シリーズ」は、怪異が出てくる一点においてのみが通常の世界と異なっている。

この引っかかりは、主人公が驚く要素が二つ以上ある、というところにある。異世界にいくということで驚き、その中で変なことになっている(チートを身につけている)ことに驚く。

そして読者は「これからまた主人公が驚くような何かが来るんじゃないか」と本能的に身構える。これが心に引っかかりを与えるのだ。なんでもありの話は、なんでもありが前提の世界じゃない限り、ズルに映る。

二つセットの嘘がいけないというわけではなく、ある種の新しい手法であるということを理解し、活用した方が良いだろう、ということだ。

また、同時に、こうした今までにない手法や、今まで避けた方が良いと思われていたことも、やってみると案外受けるかもしれない、という代表例でもある。僕はそう思う。

そのためにも、スタンダードを押さえておいて損はない。

設定が複雑になりがちな人は

さて、設定に関する注意点を述べてみた。

色々書いたけれど、まずは普通に設定を構成する要素「舞台、武器、敵」を定め、主人公を配置して、物語を組み立てていけばいいと思う。

最後に一つ、設定に関する経験談を語ろう。文章に説明が多いと感じる人は、設定をシンプルにしてしまった方が良いかもしれない。

舞台が特殊だったり、主人公の能力が特殊だったりすると、どうしたってそのスクラッチで自分が作った世界観を文章で説明せざるを得ない。それが説明過剰の印象を与える傾向はあるだろう。

だったら、異世界転生もののように、「中世ヨーロッパ風の世界」の一言で終わらせてしまうことも、一つの手だ。もっとも、これは極端な話だけれど。

世界観を書き込みたいわけではなく、ストーリーを書きたいというのであれば、一度使ってもいいかもしれない。僕のデビュー作も、ありものの設定を色々使って説明を省いていた。

おわりに

魅力的な設定は物語を豊かにする。しかし、物語を豊かにするために、魅力的な設定は必須じゃない。

良い悪いはともかく、設定がありきたりでも、書きたいことが設定の他にあるなら、その書きたいことに注力しても良い、と僕は思う。一つの参考にしていただきたい。

活用されたし。

ライトノベル作家。
商業作家としての名義は「くれあきら」とは別。今は主にブログで小説にまつわるアレコレを配信中。デビューから商業作家時代の話を「今、小説家になるために必要なもの(1)」に書いてます。