今回は小粒のエントリだ。なかなか面白い話なので、是非とも読んでもらいたい。
主題は、「ライトノベルならではの演出」だ。それについて語ろうと思う。
プロ専用の演出
ここで述べる演出は、プロのライトノベル作家として活動をしている人間じゃないと、そうそう使うことはない、そういう類のものだ。
場合によっては、プロのライトノベル作家でも使ったことがないかもしれない。僕だって、編集者から指示をされなければ、多分やらなかっただろう。思いもよらなかったかもしれない。
そして、一般文芸の小説家に至っては、まずやらないだろう。というか、やるにやれない。
どんな演出か?
その前に、「ライトノベルとは何か」について考えてみよう。
そもそもライトノベルとは
ライトノベルは、イラスト入りの小説だ。小説があって、挿絵がある。表紙もイラストである。
そう、イラストと切っても切り離せないというところが、ライトノベルの大きなポイントだ。
他にも色々な定義があるかもしれない。宗教戦争的な定義の論争対立があるかもしれない。しかし、イラストが重要な要素であることは間違いない。
ライトノベルならではの演出は、このイラストを活用したものになる。
さて、どんなものか分かるだろうか。僕の編集者が僕に出した指示から、それを見てみよう。
ライトノベルならではの演出
僕の編集者が僕に出した指示はこうだ。
「今、この100ページの後ろから3行目でこのキャラクターが登場していますけど、このキャラクターの登場をイラストにしようと思います。なので、ページをめくって101、102ページ目になった時にイラストと共に登場の文章が出てくるように、100ページ目に3行追加してキャラクターの登場を遅らせてください。代わりに後ろのページで3行削ってください」
もちろんこのままの話が来たわけではないけれど、エッセンスは伝わったんじゃないかと思う。
ページをめくったらイラストでキャラクターの登場がバンと描かれて、そして見開きの隣の文章ページでそのイラストのキャラクターが文章的にも初登場する。そういう話だ。
イラストという効果的なアクセントをどう配置すると効果的に見せることができるか、それを、本をめくるというアクションと目の動きというものを意識しつつ考えているのだ。
ライトノベル作家は、こんな細かい帳尻合わせを日々行なっている。
なんとも健気で涙ぐましい話じゃないか。
おわりに
さて。手短だけれど今回はこれで終わりだ。
今述べた話はライトノベルならではの演出だけど、こうした演出は漫画、映画、舞台、あらゆるところで行われている。
映画だって、話のうえで一番盛り上がる場所に、音楽のサビの部分をぶつけるため、タイミングを調整したりしている。
僕たちが知らないところで、いろいろな人たちが、いろいろな効果を出すために、いろいろな演出をしている、そのことにもっと意識を巡らせても良いかもしれない。
映像作品における、スローモーションの演出とか。
漫画における、無言のバトルとか。
映画で、真っ暗の画面に音だけが鳴り響くシーンとか。
そして、そんないろいろな効果的な演出を小説の中に取り入れるとしたら、いったいどうすれば良いか、どうすればその効果のエッセンスを小説に取り入れることができるのか、そのことを考えるのもまた、面白いかもしれない。
ぜひ、思考されたし。
ライトノベル作家。
商業作家としての名義は「くれあきら」とは別。今は主にブログで小説にまつわるアレコレを配信中。デビューから商業作家時代の話を「今、小説家になるために必要なもの(1)」に書いてます。