もしキミが小説を書いたことがあるとしたら、どんな形であれ推敲をしたはずだ。つまり、一度書き上げた物語を読み返し、手直しをしたことがあるだろう。短編であれ、さすがに一発ということはなかったんじゃないかと思う。
ここでは、推敲の仕方、特にどのような手段で推敲をすると良いかについて触れていきたいと思う。
ちなみに、内容的に、文章的にどんなところに着目して推敲をすべきか、という話については、別エントリ「小説の推敲の仕方」で触れている。なので、そちらもチェックしてもらいたい。
ここで触れるのは、手段、すなわちメソッドの話だ。
何を言っているか分からない?
まあ少し付き合ってもらいたい。これを読むだけでキミの推敲のレベルが少しレベルアップするかもしれないのだから。
では、いってみよう。
目次
推敲の手段
推敲をするとき、どんな形であれ、自分の書いたものを自分にインプットするだろう。PCの画面に表示したり、印刷をしたり、そんな具合に。
このとき、どのように自分にインプットするかによって、チェックできるものの幅や種類が変わってくる。それについて、話をしていこう。
まず、手段のラインナップを先にお伝えしよう。
- PCの画面上にワープロソフトで表示して推敲
- PCの画面上にPDFで表示して推敲
- 印刷してペンで推敲
- スマホで読み上げさせて推敲
- 誰かに読んでもらって推敲
そして、推敲の際にチェックする代表的な項目はだいたい以下のようなものだろう。
- てにをはや文章のねじれの見直し
- 時空などの矛盾のチェック
- 誤字脱字のチェック
- 構成、見せ方の見直し
- 世界観、設定の見直し
それぞれの推敲手段と、どの項目のチェックとが相性が良いのか、その特徴と共に触れていきたいと思う。
手段その1:PCの画面上にワープロソフトで表示して推敲
PCで小説を書いている人にとって一番手っ取り早い推敲方法が、PCの画面に表示をしてそれを読み、見直すべき箇所をその場で手直ししていくという方法があるだろう。
この方法は、以降に出てくる手段に比べて圧倒的にコスパが良く、繰り返しに耐えうるものだ。そして、そのうえどんなタイプの推敲にも一定量有効である。
PCの画面上で見る(=疲れる)関係上、誤字脱字のチェックについては他の方法と比べると劣るかもしれないが、やはりコスパで勝るので、使いようだ。
執筆の序盤から終盤まで、この手段は活用できるが、最後の最後の段階になったら、別の方法を取り入れてみた方が良いだろう。
ちなみに、世界観や設定を見直す推敲をする際には、PCの画面は大きい方が良い。物語のスケールが大きいのであれば、特にそうだ。
物語のスケールとPCの画面サイズについては、別エントリ「スケールの大きい物語を書きたいなら、○○にこだわれ」でも触れているので、興味があれば是非読んで欲しい。
手段その2:PCの画面上にPDFで表示して推敲
これは僕がプロとして小説を書いていた頃、よく使っていた方法だ。
物語がある程度固まってきたら、PC上でそのまま編集できるワープロソフトで閲覧するのではなく、編集できない状態にして閲覧することをお勧めする。たとえばPDFにするなどして、即座には編集ができないようにするのだ。
これをすると何が良いのかというと、「(PDFだからチャチャッとは)直せない」というプレッシャーから、「それがそのまま出版されたら」という後悔を想起させる。自分の文章に対してシビアになるのだ。
PC上のワープロソフトで閲覧してそのまま修正するのに比べて手間かかるが、それなりに意味がある推敲の方法だ。印刷するよりコストがかからないし、PCの画面上でそのまま直しながら読み進めるよりかはチェックの目が厳しくなる。
作品が大体仕上がったと思った段階で、一度やってみると良いだろう。効果があると思ったら、採用してみてはいかがだろうか。
手段その3:印刷してペンで推敲
PCの画面は光っている。なのでどうしても疲れる。印刷をして直すべき部分をチェックしていくという方法は、文章面でのミス、特に誤字脱字に抜群の効果を発揮する。
それに加えて、例えばA4の紙に文庫2ページ分を印刷すれば、読者が読むその読み味を追体験しながら推敲することができる。
だから、読者がページをめくるその指の速度を早めたりゆっくりにしたりしたい場合、そういうリーダビリティの調整をしたい場合、紙に印刷をして推敲をするというのは非常に有益だ。
また、どこを修正するか、どんな風に修正するかのメモが取りやすいので、とりあえず一回通して読む、というアプローチが取りやすいことが特徴だ。これにより、物語をある程度俯瞰してみながら修正することができる。
先に述べた推敲のチェック項目のすべてに効果的な推敲方法だと言えるだろう。
デメリットは印刷しなければいけないということ。紙とインク代がかかるということ。すぐにゴミになると言うこと。
そして、もう一つ。印刷をして推敲するという手段は、その物語を紙で読者に読んでもらうときに、最も効果を発揮する方法である。
電子書籍やネットで物語を提供する場合には、必ずしも有効ではないかもしれない点に注意をした方が良いだろう。
読む媒体が変わるのであれば、そこでの読書体験は別物になる。
手段その4:スマホで読み上げさせて推敲
これは最近僕が推している方法だ。
iPhoneなどには画面の文字を読み上げる機能があるので、作成したワード文書やメモをスマホ上で開き、それを読み上げさせることができる。
ワイヤレスイヤホンを使えば、料理をしながらでも、食器を洗いながらでも、移動中でさえ、自分の物語のチェックができる。
世界観や設定の見直しには向いていない気がするが、文章のおかしさは圧倒的に浮き彫りになる。読み上げた文章が日本語になっていないので、耳に引っかかるその度合いが半端ないのだ。
iPhoneでは、通常速度での読み上げだとモッタリとしているので、倍速くらいが丁度良いと感じる。自分にマッチする速度を、いろいろ試してもらうのが良いだろう。
難点は、音声で物語が流れていくため、文書上での修正箇所が把握しづらいというところ。そしてながら推敲をするとどこに引っ掛かりを覚えたのか忘れることがあること。
読み上げ文章をPCの画面上で追いかけながら見れば、そんな風に迷子になることもないので、そうした方がいいだろう。
ちなみに、このスマホで文章読み上げ+ワイヤレスイヤホンは、昨今まれに見る個人的ヒットだ。推敲として利用することを抜きにしても、俄然お勧めする。本を消化するスピードも格段に変わる。何しろ、移動時にも手ぶらで本が読めるのだから。
他エントリ「革命的な読書方法について」でも触れているのでそちらも見てもらいたい。
手段その5:誰かに読んでもらって推敲
これは推敲とは言えないかもしれないが、もし仮にキミに読者がいるのであれば、その人にチェックをしてもらうというのも手だろう。
プロの小説家にしても編集者や校閲の人に色々指摘を受けて物語を完成させている。ライトノベルの編集者は大抵物語のコンセプトから口を出すし、世界観も構成も、てにをはもチェックする。
校閲の人は物語に口を出すことはないが、誤字脱字やことわざの誤用などを指摘してくれる。場合によっては歴史的事実などの誤りも指摘してくれたりする。
今なら、ネットにあげれば色々指摘をしてくれる人がいるだろうから、そう言う人たちと一緒に作っていくというのも手としてはあるだろう。
もっとも、そうした人たちの指摘が妥当かどうかは、作者自身が吟味をする必要があるし、全部が全部聞く必要はないわけだけれど。
おわりに
ひとさまに文章を読んでもらうためには、どうしても推敲は必要だ。それは読んでくれる人たちへの思いやりであり、愛である。
そうすることで、自分の文章にも愛着を感じ、自分の物語やキャラクターにも愛情が生まれる。
丁寧に推敲されたし。丁寧に推敲をしたくなるような物語を作るべし。推敲で磨きをかけたくなるようなキャラクターを登場させるべし。
キミが自身の物語を愛せば、キミの物語はきっと他の誰かさんからも愛されるだろう。
活用されたし。
ライトノベル作家。
商業作家としての名義は「くれあきら」とは別。今は主にブログで小説にまつわるアレコレを配信中。デビューから商業作家時代の話を「今、小説家になるために必要なもの(1)」に書いてます。