二巻の書き方

プロの小説家になって困ったことの一つに、二巻をどう書けば良いのか、というものがあった。

というのも、僕はプロのライトノベル作家なんてものをやっていたわけだけれど、ライトノベルというものはほとんど読んだことがなく、ライトノベルでは当たり前にある「二巻」という概念がある小説を読んだ経験が皆無に近かったのだ。

ここでは、二巻を書くときのポイントについて述べてみよう。

ちなみに、このエントリの内容は「今、小説家になるために必要なもの(6):二巻以降をどう書くか」で書いたものと基本的に同じだが、今後二巻執筆に関する気づきがあったときのことを考えて、別エントリとして切り出した。

二巻を書くにあたっての注意事項

さて、二巻を書くにあたっての注意事項とは一体なんだろう。

僕が思うに、ポイントは二つ。

  • ポイント1:ストーリーの展開パターンをどうするか
  • ポイント2:冒頭のテクニック

それぞれについて、説明をしよう。

ポイント1:ストーリーの展開パターンをどうするか

ストーリーの展開パターンをどうするか、とはどういうことだろう。単純に言えば、二巻でどう話を進めますか、ということだ。

具体的には大体以下のパターンが考えられる。

  1. インフレ型。主人公に新しい(一巻の時よりもより強い)敵をぶつけ、強さのインフレを引き起こすパターン。
  2. 別視点型。別のキャラクターを主人公にするパターン。
  3. ひな形再利用型。一巻目をテンプレートとして、二巻目も同じ基本スタイルを踏襲するパターン。

二巻を書く際には、基本的に1、2、3の一つ、もしくは複数を組み合わせて使って書くこととなる。

そして、どのパターンを使うにせよ、主人公を取り巻く人間関係は、一般的に巻を追うごとに変化していくようにさせるのが王道だろう。

最初は仲が悪かった主人公とライバルが、イベントを重ねるごとに心を開いて認め合っていく、もしくは主人公とヒロインがイベントをきっかけに徐々に惹かれあっていく、といったスタイルだ。

人間関係を変化させない場合、「サザエさん」や「水戸黄門」や「アンパンマン」のような、長寿のレジェンド級コンテンツの様相を帯びる。物語を終わらせない一番確実な手段は、登場人物たちの関係性を変化させないこと。これに尽きる。

「サザエさん」や「水戸黄門」レベルの長寿のレジェンドコンテンツを作りたいのであれば、人間関係を変化させないようにする方が良いのだろうけれど、そうでないなら人間関係の変化を織り交ぜておいた方が良い。

というか、「サザエさん」を作ることを許容する編集者も少ないだろうから、出版社から本を出す限りにおいては、長期的に人間関係の変化がない物語を作ることはおそらく難しい。

ちなみに、インフレ型というとドラゴンボール的な敵がどんどん強くなっていくイメージがあるかもしれない。バトルものの小説でそういう展開を選択すると、おそらく作家としてかなりきつい状況に陥るだろう。知略戦の要素を入れるなど、強さのインフレを抑止するブレーキを設けておくことをお勧めする。

ポイント2:冒頭のテクニック

次に、冒頭のテクニックの話をしよう。使用すべきテクニックは三つだ。

  1. キャラクターの特徴を思い出させる
  2. 設定を思い出させる
  3. 一巻での結末に軽く触れる

一つ一つ解説していこう。

キャラクターの特徴を思い出させる

二巻を出すということは、当然一巻が出ていることになる。そして二巻を買う読者は基本的に一巻を読んでいるはずだ。

だけど、本が出るのは三ヶ月後とか半年後なので読者はキャラクターの名前や性格を忘れている可能性がある。というか、忘れているものと考えておいた方が良い。

だから、主要な登場人物を二巻で出す際には、最初にそのキャラクターの特徴を示せるようなシーンを設置して軽くおさらい(リマインド)をする、というのが通例のパターン。

例えば一巻で出て来たバカなキャラクターを二巻で出す場合、最初にバカな行為をする登場をさせることで、読者は「ああ、こいつは一巻でも出て来たバカなキャラクターだ」と思い出せる。

設定を思い出させる

物語に必要な設定についても同じだ。さらりと触れておく必要がある。

例えば押し入れに猫型ロボットがいるという設定なら、「うちの押し入れには未来から来た猫型ロボットがいる。先月、ちょっと面白い事件があって、それを機にうちに住み着くようになったのだ」とか。

その時、ある程度しっかり思い出せるレベルのリマインドキーワードを入れておくべきだろう。

一巻での結末に軽く触れる

最後に、一巻での結末を入れておくという点について。これは例えば「先月、色々な事件があって主人公は大けがをしたけれど、その後無事に怪我もなおった」みたいな話を入れておくということ。前の巻の設定を全部覚えているにしても、つなぎは必要だ、という話。

ただし、前巻におけるミステリー的なオチ(「犯人は誰それ!」とか)については、可能な限り明らかにしない方が良い。間違って二巻から読む人もいる。

二巻の書き方まとめ

三巻目以降も同じくリマインドは必要だけれど、徐々に減らしても良い。そこまでついて来てくれている読者なら、前提やキャラクターの詳細は、ある程度は承知の上だろう。

いちいち丁寧にリマインドをするよりも、本編にページを割いた方が読者としては嬉しい。どれから読んでも大丈夫なシリーズ物の本なら、毎回二巻程度のリマインドを設けても良い。

というわけで、続き物を書くにあたっての注意事項は二つ。展開パターンと冒頭だ。

活用されたし。

ライトノベル作家。
商業作家としての名義は「くれあきら」とは別。今は主にブログで小説にまつわるアレコレを配信中。デビューから商業作家時代の話を「今、小説家になるために必要なもの(1)」に書いてます。