創作に活かす小説の読み方

素晴らしい小説は、読んで楽しめるだけでなく、それ自体が教科書にもなる。

ここでは、そんな素晴らしい小説に出会った時、どうすれば創作に活かすことができるかについて記そうと思う。

ここにある方法を身につければ、その一冊の小説からもらった感動の数だけ、小説技法を学ぶことができるようになるはずだ。

小説を読む方法

このブログ「小説家の手のうち」では、様々な作品を取り上げて、その素晴らしさとそこで使われているテクニックを説明している。

取り上げている作品は、僕が感銘を受けたものがほとんどだ。僕は作品を楽しんだのち、そこで使われている技術を吸い上げ、キミの創作活動に活かせるような方程式として、このブログの中で提示している。

では、僕はどのように作品にメスを入れ、分析をし、物語に使われている技術をサンプリングするのだろうか。それについて出来るだけ明文化してみよう。

作品の楽しみ方

まず、小説を読んでいる時(あるいは映画や映像作品をみている時)、僕はそのまま楽しむ。メモを取ることもないし、ボイスメモを記録したりもしない。ただただ、純粋に作品の世界に没頭している。

そして、作品を読み終わった後、ノートPCに向かい、素晴らしかったシーンや感動したシーンを記す。頼りにするのは記憶だけ。忘れているものがあったとしたら、「忘れてしまう程度のものだったのだ」と割り切る。

素晴らしかったシーン、感動したシーンを記したら、その素晴らしさ、感動がどのような仕掛けでもたらされたものかを分析する。

分析の観点は以下だ。

  • その1:探してみる
  • その2:移動してみる
  • その3:削ってみる
  • その4:逆にしてみる
  • その5:追加してみる

さて。

例のごとく、なんのことだかさっぱりだろう。

というわけで、それぞれどのようにメスを入れるものか、説明をしてみようと思う。

なお、これらの分析には漫画「スラムダンク」の最終巻の内容を参考に進めたい。具体的には、最終巻における桜木花道と流川楓のタッチに至る一連の流れを感動したシーンとして説明をしていこうと思う。

ただし、このエントリでは細かい内容は触れない。既読であることを前提に話を進めさせてもらう。

なので、漫画「スラムダンク」は是非とも読んでおいてもらいたい。これほどの名作、読んでおいて一ミリの損もない。

最低でも、「バディ(相棒)ものを書くときのポイント」のエントリは読んでから以下を読み進めてほしい。

その1:探してみる

感動したシーンが出てきたら、そこで行われたアクションが今までのストーリーの中に存在していたか、そこで使われたセリフが今までのストーリーの中に存在していたかを、確認してみる必要がある。

例:漫画「スラムダンク」の場合

その2:移動してみる

キミが感動を覚えたそのシーンが、もし作品上のもっとずっと前に行われたらどうか。感動シーンが登場する位置を変えて意味合いが変わるとしたら、どのように変わるか。それを確認してみる必要がある。

例:漫画「スラムダンク」の場合

その3:削ってみる

キミが感動したシーンを構成する要素のうちの「何か」が、その該当のシーンから消えて無くなった場合、どうなってしまうかを考えてみる。

例:漫画「スラムダンク」の場合

その4:逆にしてみる

もし仮に、その感動的なシーンで主人公が真逆の行動をとったらどうなるか、自分はどう感じるか、それを考えてみる。そして、そこからその感動的なシーンの特殊性を見出してみる。

例:漫画「スラムダンク」の場合

その5:追加してみる

その感動的なシーンに、何かを付け加えてみる。その時、自分がどう感じるかを考えてみる。

例:漫画「スラムダンク」の場合

分析まとめ

こうした手法を使って、感動したシーンを様々な角度から見てみることで、その感動がどのような仕組みで成立しているのか、どのような要素によって作り上げられているのか、が見えてくるはずだ。

漫画「スラムダンク」の例でいうと、上記のようにクライマックスのシーンを「探して」「移動して」「削って」「逆にして」「追加して」みることで、最終的に「バディ(相棒)ものを書くときのポイント」に記したような分析結果にたどり着くことになる。

分析のポイント

分析におけるポイントは、ずばり「変化」だ。

物語の中でなんらかの「変化」があったからこそ、キミの感情に変化がもたらされた。何かが動いたからこそ、キミの感情も動いたのだ。

だから、その感動シーンで見られる「変化」を見つけてみよう。

主人公は、その感動シーンで、どんな違いを見せつけたか。どんな行動(いつもなら取るはずのない行動)をとったのか。そして、そんな行動をとったきっかけは何か。何が、登場人物の行動を変えさせたのか。

あるいは、行動自体、セリフ自体はいつもと同じかもしれない。その場合でも、周囲の環境など、どこかに必ず「変化」が存在している。その変化を見つけよう。

おわりに

作品を分析しようとするなら、一にも二にもキミがその作品のどこに心を動かされたのか、それを徹底的に考えて明らかにし、そこにメスを入れていくことが必要になる。

心が動かされた場所に対する分析なら、より深いところまで分析が及び、より妥当な分析になるはずだ。

その時、その感動シーンが登場する位置を変えたり、要素を削ったり、逆に追加したり、あれこれと変化させたりすることで、そのシーンにおけるその感動がどのような力でもたらされているのかを、把握することができる。

一番有効なのは、キミ自身が書いている(書こうとしている)物語の中に「こういうもの(ライバル同士が手を組んで戦う、など)を書きたい」というものを思い浮かべ、それが描かれている作品を読み、その中で「こういうものを書く場合には、こういうメカニズムで読者の感情を動かすのか」と分析をしながら自身の作品の執筆に活かしていく方法だろう。

要するに、書いている側から先人の名作を分析し、それを手元の作品に随時反映していくのだ。そうすることで、今まさに悩んでいる箇所が、どのように組み立てられているのかというところが、より浮き彫りになる。

そう。小説上達の近道は、やはり書くことだ。書いて、悩んで、他の作品からエッセンスを学び、メカニズムを自分なりに自作に取り込んでいくことだ。

活用されたし。

ライトノベル作家。
商業作家としての名義は「くれあきら」とは別。今は主にブログで小説にまつわるアレコレを配信中。デビューから商業作家時代の話を「今、小説家になるために必要なもの(1)」に書いてます。