キミたちは編集者が小説家の書いた小説に対してどのような指摘をするのかご存じだろうか。
ご存じない? なら、このエントリを読んでもらいたい。編集者が小説家にどんな指摘をするか、その一端が分かる。
そして、多くの編集者は、キミの小説に対して最低限ここに書いてあることと同じことを指摘してくる。キミ自身の作品に向けられた指摘だと思って、このエントリを読んでもらいたい。
編集者の指摘
まず、編集者からの指摘と言っても、もちろん、作家によって指摘されるポイントは違うだろう。
だが、編集部の片隅のスペースで打ち合わせをしていると、別の作家さんと編集者さんの打ち合わせの声が聞こえ漏れてくるというシチュエーションが度々あり、その時に聞く指摘は僕が日々受けていたものと毎度大体同じだったりした。
だから、どんな作家も言われるであろう、編集者にとってのおきまりの指摘というものは存在するようだ。
どんな指摘か。こんな指摘だ。
- 説明をするな、描写をしろ
- なぜ、を書け
- 描写を丁寧に
一つずつ見ていこう。
説明をするな、描写をしろ
説明をするな、描写をしろ、とはどういうことか。
これは、例えばあるアイテムやら主人公の能力やらを使う際、そのアイテムや能力の説明をする前に、まずはバシッと使って派手に演出してしまえ、という話だ。説明なしで済ませられるならそれに越したことはない。
これは是非とも身につけておいた方が良いテクニックだろう。難しいものでもないし、物語のテンポが俄然良くなる。
小説においては、描写こそが最大の説明になるのだ。
なぜ、を書け
なぜ、を書け、というのは、なぜ主人公はそういう行動に出たのか、なぜ犯人はそんな行動に出たのか、なぜヒロインはそうしたのか、そういう理由を一つ一つ明らかにせよ、という話だ。
物語にでてくるすべての「なぜ」を作中で明らかにする必要はないかもしれないが、メインとなる「なぜ」と、主人公の行動原理となる「なぜ」は明らかにする必要がある。すぐに作中で明らかにするかどうかはさておき、作者と編集者はその「なぜ」について合意しておく必要がある。
それがないと、端から見て嘘くさい物語になるからだ。
描写を丁寧に
描写を丁寧に、というのはそのままの意味だ。今、主人公がどこにいて、あたりはどんな雰囲気で、主人公はどう感じているのか、そうしたことが的確に読者に伝わるように、丁寧に記す必要がある。何しろ、小説においては文字のみが唯一の情報源なのだから。
ライトノベルは絵があるといっても、全部のページに絵があるわけじゃない。絵に頼るわけにはいかない。
描写については「描写のパターン化について」でも少し触れている。ぜひ、合わせて参照してもらいたい。
おわりに
と言うわけで、編集者が作家にする指摘について、簡単にだが書いてみた。
「自分の想像していたものと違う」と思った人もいるだろう。例えば、「キャラが立っていない」とか、「物語に新規性がない」とか、そういう指摘が編集者から出てくる、と想像した人もいるかもしれない。
もちろん、キャラの話も、物語の新規性といった話も、編集者とすることは多々ある。だけど、(キャラはともかく)ことさら物語の新規性に関しては、小説を執筆するよりもずっと前、梗概やプロットの段階での話だ。編集者は、そう言う物語の面白さの根幹を担う部分は早めに見極めようとする。
作家に執筆を許可するのは、編集部内部でGOが出た場合のみ。だから、それまでに物語の大枠についてはケリがついている。後から指摘されることは少ないのだ。
キミの小説が「新規性がない」と言われるのであれば、それは小説本文を執筆する前から(=プロットの段階で)分かりきっていることになる。それをどうにかしたいと思うのであれば、物語を書く前に、「新規性」について考えた方が良いだろう。
なお、なぜ物語に「新規性」が必要なのか、そもそも本当に必要なのか、そのあたりを別エントリ「小説における「新規性」について」で語っている。合わせて読んでもらえると良いだろう。何かの役に立つはずだ。
活用されたし。

ライトノベル作家。
商業作家としての名義は「くれあきら」とは別。今は主にブログで小説にまつわるアレコレを配信中。デビューから商業作家時代の話を「今、小説家になるために必要なもの(1)」に書いてます。