今、小説家になるために必要なもの(13):キミがデビューをするのに必要なものは

前のエントリでは売れている本がなぜ売れているのかについて触れた。ここではキミがデビューをするにあたって必要なものについて語ろう。

(このカテゴリは続きもののため、未読の方はぜひ第一回「今、小説家になるために必要なもの(1)」からどうぞ)

デビューを目指すキミたちにもっとも必要なもの

デビューを目指すキミたちにもっとも必要なのは、□□□である

もうお分かりだろう。

□□□に入るのは、「ファン」だ。

デビューを目指すキミたちにもっとも必要なのは、ファンである

「大御所」たちはその長年のキャリアの中で得たファンに支えられている。「ホープ」たちはネット時代からのファンたちに支えられている。

そういう人達が買ってくれるからこそ、そういう人たちが他の人に薦めてくれるからこそ、ランキングに名前を連ねることができているのだ。

ファンに支えられているなんて、当たり前だって?

確かにその通り。あまりにも当たり前すぎる話だ。

でも、出版社の賞に応募してデビューを果たそうとしているようなクラシカルでロートルな人達のうち、どれだけの人間がデビュー前にファンをつけようとしているだろう。

どれだけの人間がデビュー前にファンを一人でも多く獲得しようと努力しているだろう。

キミには何人いる?

ズバリ聞こう。

今、キミの小説に、一体ファンは何人いるだろうか。ファンを増やすためにどんな努力をしているだろうか。

今時点でファンもいなくて、獲得の努力を何もしていないなら、運良くデビューを果たして市場に本を出すことになったとしても、ファン獲得の戦いには勝てない。

あらゆる市場はゼロサムゲームだ。携帯電話がアイスの売り上げを食ったように、誰かが勝てば、誰かが負ける。

しかも、人口が減り、経済成長もかんばしくない昨今では、このサム(合計)の大幅な拡大はそうそう期待できない。

本を買う人達は、もうすでにお気に入りの作家を何人も抱えている。既存の人気作家を差し置いて、キミの本を買うだろうか。

村上春樹よりもキミの本が良いと言うだろうか。

伊坂幸太郎よりもキミの本が良いと言うだろうか。

西尾維新よりもキミの本が良いと言うだろうか。

ソード・アート・オンラインよりもキミの本が良いと言うだろうか。

ライバルは作家だけじゃない。市場では、あらゆるものがライバルになる。

ソーシャルゲームへの課金をやめて、キミの本を買うだろうか。

アイスをやめて、キミの本を買うだろうか。

コンビニのスイーツをやめて、キミの本を買うだろうか。

友達とスタバでコーヒーを飲むことをやめて、キミの本を買うだろうか。

彼女とレストランにいくのをやめて、キミの本を買うだろうか。

スマホを解約して、キミの本を買うだろうか。

まず買わない。買うわけがない。買う理由がどこにもない。それは、面白さの問題じゃない。キミの本が面白くないからじゃない。

どれだけ面白かろうが、キミの本は見向きもされない。そういう社会構造なのだ。そういう仕組みなのだ。そういうシステムが構築済みなのだ。もう完全にそうなっているのだ。

そう、面白いものは世界中に溢れている。

だとすると、どうする?

小説は、ラノベは、一層売れなくなっていく。小説家になりたいと夢を追いかけている人間が、小説消費の一翼を担っているのだけれど、前に見た通り小説賞への応募数は減ってきている。小説というメディアの魅力が低下していて、売り上げも低下している。

売れる作品は既存の人気作家の作品か、なろうのようなサイトで人気を博した小説くらいだ。

だとすると、どうだろう?

小説を書いて一発逆転なんて目指さずに、別の道を選べばいい。どこも厳しいけれど、右肩下がりの小説産業なんてやるだけ時間の無駄だ。

少なくとも金を稼ぎたいというのが目的なら、別の作戦を練って、そして実行したほうが良い。小説はコスパが悪すぎる。

それでも

それでも小説を書きたい?

だったら話は早い。書くのみだ。

書いて、自分の作品を気に入ってくれる人を一人でも多く獲得すればいい。

まずはファンを作ること、それに専念したほうがいい。自分が面白いと思うものを、自分のやり方で。そして、なろうなりブログなりどこでもいいから公開してファンをつけるのだ。

たくさんの人に楽しんでもらえる作品を書くことができたなら、その人達を大切にして、さらに作品を書く。

大御所やホープがそうであるように、「この人の作品ならこういう感じだろう、こういう楽しみが得られるだろう」と認知させられるだけのカラーと作品数を提供する。

金儲けのことを考えるのはその後でもいいだろう。安心して構わない。どのみち小説でお金なんて、そうそう入ってこないのだから。

なにより、小説を書くことは楽しい。キーボード一つで世界を丸々一つでっち上げて、その世界の神様になることができるんだから。楽しくないはずがない。

だろう?

次回、「今、小説家になるために必要なもの(14):あとがき」につづく