前のエントリで、僕はキミに「デビューに必要なものは何か」という問いかけをした。その問いの答え合わせは後でするとして、まずは僕の話をさせてもらいたい。
(このカテゴリは続きもののため、未読の方はぜひ第一回「今、小説家になるために必要なもの(1)」からどうぞ)
作家が戦線離脱する本当の理由とは?
いきなりだけれどクエスチョン。なぜ作家は辞めていくのだろう。
いくら「売れない」といっても、一冊書けば五十万から百万くらいは手に入るのだから、副業として小遣い稼ぎを続けても良さそうなものだ。それに、多かれ少なかれ苦労の末に手に入れたポジションなわけだから、みすみす手放すなんてもったいない。
でも、売れない作家は音もなく辞めていく。僕もしかり。なぜだろうか。
その理由では辞めない
デビュー作から二作目、三作目が出せずに消えていく作家を思い描いてみると、おそらくネタがつきて作家を辞める人間をイメージするかもしれない。
実際は?
そういう人もいるだろう。僕も小説家になる前はそう考えていた。みんな、ネタがなくなって作家を辞めていくのだと。
ただ、実際に小説家業をやってみると、ネタ切れ以外の理由で辞める人の方がずっと多いだろうと感じた。
というのも、プロになればネタ出しのテクニックはイヤでも身につくし、ライトノベルの世界に関して言えば編集者から「こんなのをやったらどうですか」というフォローアップもある。そのあたりは案外どうにかなるものなのだ。
純文学ならいくらか事情は違うだろうけれど、ライトノベル界に限って言えば、ネタ切れという理由で作家を辞める人は、きっとあまりいない。
なら、あまりに売れなくて出版社から書かせてもらえなくなるから?
ありそうな話だけど、これも正解とは言い難い。というか、ライトノベルの世界においては、むしろハズレだ。
もちろんジャンルや出版社によって違うだろうけれど、そんな理由で切られるなら、もっと多くの作家が一冊で終わる。よほど社会人として不出来じゃない限り、書かせてもらえる。
一般に思われているよりもずっと、出版社は作家を切らない。時間と金をかけてデビューさせているのだから、切るくらいなら使い倒す。
では、儲からないから?
三分の一くらい正解。でも、それだけならたぶん僕は辞めていなかった。少なくとももう数年は続けていただろう。
現に、僕は今まさにこうして(おそらく)金にならない文章を書いている。お金がすべてじゃない。
「悪魔的な力学」が小説家を辞めさせる
では一体、どんな理由で辞めていくのか。
当然、その理由は人さまざまだろうけれど、少なくとも昨今のライトノベル作家に関して言えば、誰しもが現在の出版業界に潜んでいる「悪魔的な力学」の存在を、多かれ少なかれその肌で感じ、そして市場から去っているはずだ。
ここでは、小説新人賞をとってデビューをした場合にどのような出来事が待っているのか、一人の小説家をサンプルにして先のクエスチョンを紐解いていくとしよう。
はたして、作家が戦線離脱する本当の理由とは一体何なのだろうか――
次回、「今、小説家になるために必要なもの(3):ある小説家のデビュー前夜」につづく
ライトノベル作家。
商業作家としての名義は「くれあきら」とは別。今は主にブログで小説にまつわるアレコレを配信中。デビューから商業作家時代の話を「今、小説家になるために必要なもの(1)」に書いてます。