シリーズ物のライトノベルやマンガ、それからアニメで時々見かける展開として、主人公(ヒーロー)とヒロインの間に第三の男性が入り込み、ヒロインに積極的に求婚(アプローチ)し始める、というものがある。
今回は、この展開におけるセオリーについて触れてみたいと思う。
果たして、第三の男性はどのような人物で、彼のヒロインに対するアプローチはどういう結末を迎えるのだろうか。
前提となる設定
まず、第三の男性が登場してヒロインに積極的に求婚をする話の展開における前提は、物語によってバリエーションはあれど、だいたいこんな感じだ。
- 主人公:泥臭くて素直じゃない。モテないし、毎日同じ服を着ている。ヒロインとの関係はまだまだこれから(ケンカする状況が多い)。
- ヒロイン:主人公と比べると、割と育ちが良い。見た目も良い。主人公とは口ゲンカが絶えない。
- 第三の男性:ヒロインと釣り合わないほどに超ハイスペックな男性。王子、御曹司でイケメン紳士。生まれ、育ち、性格までも申し分なし。モテまくり。非の打ちどころ一切なし。
さて、現実の世界ならどうやったってヒロインは第三の男性になびく。第三の男性はヒロインをかっさらってハッピーエンドになり、ヒロインは主人公のことを一瞬で忘れ去るだろう。
いや、忘れ去るなら可愛いもので、リアルワールドのヒロインは女子会のたびに主人公の滑稽な行動を話のネタにしたりもする。
女子会で笑いのネタになるかはさておき、現実ではそんな感じにヒロインを一瞬で奪われて終わりだ。
しかし、物語の世界では違う。少なくともセオリーとしては、寝取られて終わりなんてことにはならない。
どうなるか。
当然、第三の男性はヒロインの元を去っていく。それどころか、ヒロインと主人公の距離を近づけ、ひっつきやすくしていく。
では、主人公はどうやって第三の男性を撃退し、ヒロインの元から去らせるのだろうか。
第三の男性の撃退方法
この物語展開における撃退のセオリーはこうだ。
第三の男性は悪役で、なんらかの邪な理由からヒロインに近づき、求婚をしている。例えば、ヒロインの持っている何か(地位、情報)を手に入れるため、など。
そして主人公は彼の悪巧みに気づき、第三の男性の悪事を暴く。
それにより、ヒロインは「ああ、あの素敵な人は悪者で、わたしを騙していたのね。ショック」と思うと同時に、「主人公くんには少し感謝しないといけないかも」となる。
そして二人の距離がぎこちなく(かつ、少しだけ)近づく、というわけだ。「べ、別に感謝なんて全然してないんだからね!」とかなんとか言いながら、ヒロインを守ろうとした時にできた傷の手当てなんかをしたり。
第三の男性に対する主人公の態度
主人公と第三の男性の関係性にも一定のルールがある。
というのも、第三の男性の悪巧みに気づくまでの間は、この第三の男性はヒロインを幸せにしてやれる紳士として主人公(と読者)の目には映る。
もちろん、主人公は心の底では「この第三の男性は愛すべきヒロインを奪う不届きもの」と思っているわけだけれど、そんな態度を表に出しては器の小ささを露呈するだけ。自分の株を下げてしまう。
だから、表立っては主人公は第三の男性を敵対視しない。ヒロインが第三の男性の元に行こうとするのを、主人公は止めない。
しかし、ちょっとしたきっかけから第三の男性の目論見を知り、その悪事を暴く。
ポイントは、主人公は「ヒロインを取られたくない」と躍起になるのではなく、「ヒロインの幸せを考えたら第三の男性に任せた方が良いだろう」と、ヒロインの幸せを願うという点だ。
おわりに
この「ヒロインに第三の男性が求婚」パターンを利用している物語としては、ヤマグチノボルの「ゼロの使い魔」がその代表選手だろう。
だから、このパターンの詳細が知りたいのであれば、「ゼロの使い魔」を手に取ってみるのも一つの手だ。そこから学べることも多いに違いない。
そして、今回このエントリを書いたのは、2019年2月8日に公開される「劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>」の予告を見たせいだ。
この予告を見る限りでは、このシティーハンターの映画も、今回触れた「ヒロインに第三の男性が求婚」パターンを利用しているかもな、と思い、こうして一つのセオリーとして仕立て上げてみた、というわけだ。要するに、CV:山寺宏一氏は、ここで言う第三の男性=悪役だろう、と。
とは言っても、これを書いている2019年1月27日時点では、まだ映画は公開されていないので、ぶっちぎりで外しているかもしれないけれど。
ともあれ。
活用する場所が限られるセオリーかもしれないけれど、使う場所があれば割とすんなりと有効活用できる題材だと思う。
そう、使う場所さえあれば。
活用されたし。
ライトノベル作家。
商業作家としての名義は「くれあきら」とは別。今は主にブログで小説にまつわるアレコレを配信中。デビューから商業作家時代の話を「今、小説家になるために必要なもの(1)」に書いてます。